はじめに
誰もが「傷つくのは嫌だ」と思います。
でも、なぜ私たちはそれほどまでに
傷つくことを避けようとするのでしょうか。
心理学やコーチングの視点から見ると、
その背景には人間の普遍的な欲求と、
無意識に働く「恐れのパターン」が隠されています。
今日は、トニー・ロビンズが提唱した
「シックス・ヒューマン・ニーズ(6つの人間の欲求)」と
「3つの恐れ」の観点から、このテーマを紐解いていきましょう。
1. シックス・ヒューマン・ニーズから見た「傷つきたくない」という気持ち
シックス・ヒューマン・ニーズとは、
人間が誰しも持っている6つの根本的な欲求のことです。
このフレームに照らして考えると、
「傷つくのが嫌」という気持ちは、まずは Certainty(安心・安定の欲求) にあたります。
なぜなら、人は予測できない痛みや不快感をできるだけ避けたいと感じるからです。
「安全でいたい」「リスクは最小限にしたい」という気持ちは、とても自然な人間の欲求なんですね。
ただし、「傷つきたくない」という感覚は必ずしもそれだけにとどまりません。
場面によっては、他の欲求とつながっていることもあります。
たとえば──
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Love & Connection(愛・つながりの欲求)
人との関係が壊れたり、拒絶されたりすることで心が痛むのを避けたい。
例)大切な友人に自分の本音を話したら、嫌われてしまうのではないかと不安になる。 -
Significance(重要感の欲求)
自分の価値を否定されることが「傷」として響いてしまう。
例)仕事で一生懸命準備したのに、上司から「期待外れだ」と言われてしまった。 -
Certainty(安心・安定の欲求) が根底にあるとはいえ、
恋愛の場面では「相手に受け入れられたい(愛とつながり)」が強く働くこともあれば、
職場や人前では「自分の存在価値を認めてもらいたい(重要感)」が大きく関係してくることもあるのです。
このように見ていくと、「傷つきたくない」という気持ちの奥には、
安心や安定を求める気持ちがベースにありながら、
同時に「つながりを守りたい」「自分の価値を大切にしたい」という想いも隠れている場合があるのです。
2. 人が避けたがる「3つの恐れ」
人はなぜ痛みを避けようとするのか?
私たちの心には、「できるだけ心地よい状態でいたい」「嫌な思いはしたくない」という働きがあります。
心理学ではこれを 快楽原則 と呼んでいて、無意識のうちに私たちの行動を左右しているんです。
これは進化の歴史で考えると、とても自然なこと。
危険を避けることは命を守るために必要で、「痛みを避けたい」という反応は、生き延びるための本能でした。
「安全でいたい」「リスクは最小限にしたい」という気持ちは、昔から人間に備わっている大切な機能なんですね。
痛みの回避がコンフォートゾーンを強化する
ただ、今の時代ではこの「痛みを避けたい」という本能が、
私たちの可能性を狭めてしまうこともあります。
たとえば…
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「もし失敗したら恥ずかしいから、挑戦しないでおこう」
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「批判されるのが嫌だから、無難にしておこう」
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「変化は不安だから、今のままでいたほうが安心」
こんなふうに考えてしまうのは、
まさに コンフォートゾーン(安心できる領域) に
とどまろうとする心のはたらきです。
行動しないための“言い訳”になってしまうことも
さらに、この痛みを避けたい気持ちは、
ときに 行動しなくてもいい理由 に
すり替わることがあります。
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「どうせやってもうまくいかないし…」
→ 結果への恐れが言い訳になる。 -
「人に笑われたらどうしよう」
→ プロセスへの恐れがストップをかける。 -
「大切な人を失ったら辛すぎる」
→ 失う恐れが一歩を止める。
こうして「行動しないこと」が正当化され、
現状を変えない選択が安心に感じられてしまうのです。
つまり「傷つきたくない」という気持ちは、
私たちにとってとても自然な反応。
でも、その気持ちにとらわれすぎると、
本当に欲しかった未来や成長のチャンスを
遠ざけてしまうこともあります。
3. トニー・ロビンズとは?
ここで少し、提唱者である
トニー・ロビンズについて紹介しておきましょう。
トニー・ロビンズは世界的に有名なライフコーチで、
心理学や神経言語プログラミング(NLP)、
自己啓発を融合させた独自のメソッドで
数百万人に影響を与えてきました。
彼のセミナーや著書は、成功法則だけでなく
「人間が本当に求めているもの=6つの欲求」
をベースにしていることが特徴です。
4. シックスヒューマンニーズとの関係
では、3つの恐れとシックス・ヒューマン・ニーズを重ね合わせてみましょう。
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失う恐れ → 愛・つながり/重要感
例:恋人に拒絶されて「自分は大切にされていない」と感じる。 -
結果への恐れ → 確実性/成長
例:新しい仕事に挑戦しても失敗したら「自分には価値がない」と感じる。 -
プロセスへの恐れ → 確実性/快適さ
例:努力する途中で笑われたり恥をかいたら「二度と挑戦できない」と思う。
このように、恐れの根底には
「守ろうとしている欲求」が必ずあります。
5. 自分の恐れを見極める質問集
ここからは実際に使えるセルフコーチングの質問です。
自分の「傷つきたくない」気持ちの奥にある欲求を見極めてみましょう。
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あなたにとって「傷つく」とは、どんな出来事ですか?
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そのとき、一番避けたいのは何ですか?
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大切な人や信頼を失うこと?
例)私が独立開業すると、きっと友人は離れてしまうだろう。 -
望んだ結果を得られないこと?
例)転職しても成果が出ず、会社に必要とされなかったらどうしよう。 -
その過程で苦しむこと?
例)新しい習い事でうまくできず、周りから笑われるのが怖い。
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それを避けることで、あなたが守りたいと思っている欲求はどれでしょうか?
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安心・安全(確実性)
例)失敗しないように、安定した道を選びたい。 -
変化や刺激(不確実性)
例)同じ毎日では退屈だから、新しい挑戦をしたい。 -
自分の価値(重要感)
例)人から認められ、自分は特別だと感じたい。 -
大切にされること(愛・つながり)
例)誰かに必要とされ、深くつながっていたい。 -
成長や挑戦(成長)
例)失敗しても学び、より大きな自分になりたい。 -
人の役に立つこと(貢献)
例)自分の経験を通じて、他の人を助けたい。6. まとめ
「傷つくのが嫌」という気持ちは、
単なる弱さではなく
大切な欲求を守ろうとする自然な反応 です。
ただし、その恐れにとらわれすぎると、
本当に望んでいる成長やつながりのチャンスを
逃してしまうこともあります。-
自分はどの恐れに反応しているのか?
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その恐れの奥で守りたい欲求は何なのか?
この2つを問い直すことで、
あなたの「傷つきたくない」という感覚は
「成長のヒント」へと変わります。
ぜひ今日から、この質問集を通じて
自己理解を深めてみてください。 -
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